一年が終わろうとしています。
今年は変化が大きすぎて、起こったことの数もはんぱなく、軽く２年分くらいの長さに感じる一年でした。

去年の年末は、まだこの家の契約もしていませんでした。
もちろんこの家に住もうと決めていましたし、そのためにいろいろ動いてもいて、移住が現実になうとはしていたものの、「移住の夢」はまだ夢でしかなくて、実現するという実感なんて何もありませんでした。
閉塞感いっぱいの東京での生活を本当に終わらせることができるのかどうかでさえ、まったく確信などなく、わずかな希望だけを持って今年を迎えたのを記憶しています。

１月の末にこの家の契約を済ませてから引越しまでの４ヶ月間は、東京での生活納めと引越し準備で手いっぱいでした。
それまで経験してきた都内で完結する引越しとは異なり、都県をまたぐことの手続きや地域差と気候の違いに対するもろもろの準備で、特に５月に入ってからは、「とにかく大変だった」という以外の記憶が飛んでしまっているくらい、いっぱいいっぱいだったと思います。

そしてとうとう迎えた引越し当日。
引越しのための荷物作りの大変さとかかった時間にくらべて、引越し業者のテキパキとした動きとあっという間に終わった作業に唖然としつつも感動したのが遥か昔のようです。

嵐のような引越しの数日間が無事に終わって安堵する間もなく、驚きに満ちた新しい人生が始まりました。

田瀬に来たのが、春から夏への最高の季節だったこともあって、夢にまで見た自然の中での暮らしは、毎日が新鮮さと感動の連続でした。
広い空と雲のとてつもない立体感とクリアな景色、玄関から外に出るたびに感じる開放感と澄んだ空気と緑の香り、朝の凛とした透明で清々しい気配、毎日の生活がまるで、休暇でリゾート地にいるような気分でした。（そしてそれは今でもあまり変わっていません。）

それでも、引越しの荷物と家の片付けや、都会生活とはまったく異なる生活感覚に加えて、日々起きる細々とした問題で、かなり無理をしていたのでしょう。
夏の暑さですっかり参ってしまいました。
夏の間は、暑さでぐったりとしてつらく、何もできなかったのを覚えています。

なんとか暑さを乗り切ったあとは、次にくる大きな気掛かり「冬の寒さ」への準備と、まだ残っている家の片付けとに明け暮れる毎日になりました。
こちらにきてから、そして夏が終わってからは特に、会う人ごとに「この冬が最初ですね」と毎回のように言われていましたから、冬の寒さに対する期待は高まるばかりです笑。

実際に寒くなってからは、家の片付けはほぼ終わっていたものの、経験したのことない寒さをなんとかしのぐことに一日を費やしていたように思えます。
家の中にいても真っ白になる息や、ストーブを全開にしても暖かくならない部屋、洗って乾かしておいた茶碗の水滴がそのまま凍っていたりと、実際の冬は予想を超えた驚きに満ちています。

振り返ってみるとこの一年は、前半と後半とで大きく二つに分かれた、多彩で濃密な年でした。
前半は、都会での閉塞感と移住への期待とに包まれて、灰色の景色の中で忙しく過ごした半年でしたし、後半は、田瀬の四季の半分に触れて、生きることの力強さと自然の豊かさと人々の温かさに感動した月日になりました。
終わってみればどちらも「もう思い出でしかない一年」ですけれど、なんとも目まぐるしく、しかも大きな大きな変化の一年だったことに間違いはないです。

さて来年はどうなるのでしょうか、楽しみしかありません。